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素晴らしい。「GWに何を観るか」はとても迷ったのだが、この映画が特に予想できないのでこの映画を観た。グラン・トリノというのがフォードの車であることも観るまで知らなかった。
一時期、映画を面白かろうが、面白くなかろうが、売れていようが、売れていないだろうが、公開している映画を全て観ていた時期があった(10年ほど前だが)。そのうちに、映画の予告編を観ただけで何を売りにした映画かは予想がつくようになってしまった。今は、かなり精選するようになって、ストーリーや売りとしていることが何かが見えないものを観ている。だからGOEMONなんかは恐らく脚本が貧しいだろうなぁ、とか、バーンアフターリーディングはメッセージ性は無く、コメディと言っても向こう(海外)の笑いであまり笑えないんだろうなぁ、とか(基本的に欧米のギャグは面白いと思わないし、字幕で観てもタイミングがズレてる)そんな評価になるので観ない。コメディは邦画のほうがいい。歴史については知っていても知らなくてもイメージを映像化してくれているので、関心のある歴史の映画は観るようにしている。
その中で、この映画は予告編を観ても何もわからない。観たことのある俳優はクリント・イーストウッドだけ。ボーっと観る映画なのかな、とは思ったが、GWだし、アメリカの生活をのんびりと感じる映画もいいかな、なんていう曖昧な動機で映画館へ。
ところが、この映画、様々なところに仕掛けがあり、仕掛けがありすぎて、巧妙だ。
まず、グラン・トリノは良きアメリカの象徴。それに対してトヨタやホンダの車がじゃんじゃん登場する。隣にアジア系が一家で住む。そして、若い神父(若いことが重要)と教会での連れ合いの葬儀。しかし、反発心もある-に対して、お隣のアジア一家は怪しいまじない師が登場し、主人公の心情を言い当てる(アメリカのキリスト教原理主義も崩壊)。孫がピアスのへそだしルックなのに減滅する中で、アジアの若者がまともに感じられてしまう(欧米文化の優位性崩壊)。明らかに今のアメリカを象徴する(アメリカ資本主義の崩壊)シチュエーションが出来上がる。
次に、イーストウッドの朝鮮戦争の過去と、現在の健康状態。そこは「生と死」のテーマとなる。
さらにあっと言わせる「結末」。この生と死のテーマに沿った脚本は大したことは無いのだと思う。むしろもっと練ってもらいたいと思うし、アジア系の演技が下手なのも目に付く。しかし、この最後の結末で全部チャラにしてしまうほどの「落とし」があることは度肝を抜く。
この結末は、観客をただ喜ばせようとするのであれば、スタンダードな結末で終わるのがいいのだろうが、モラルとか、倫理とか、そういう本筋で考えるならばこの結末が相応しい。死期の近い主人公という設定がこの結末を嫌味や当てつけにさせないところの布石も凄い。
こういった結末の持って行き方をハリウッドが嫌うのは、すなわち資本主義経済の闇の部分だと思うのだが、そういう意味でイーストウッドはこの映画で訴えているメッセージとしては筋が通っているといわざる得ない。
スカッとする映画ではないが、本来、映画はこういう筋の通ったものであるべきであろうと思う。