http://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%89-%E6%A3%AE-%E9%81%94%E4%B9%9F/dp/462010731X/ref=sr_1_4?ie=UTF8&s=books&qid=1230488461&sr=8-4
森達也は「世界が完全に思考停止する前に」を読んではいるが、小説も映画も知らない。彼を嫌いなわけではない。むしろ共感することが多かった。知人の薦めでこの小説を読むこととした。
さて、この小説だが、かなり面白い。恐らく彼は思考停止の構造をメッセージとして伝えたいのではないかと思う。平均と標準の違いもなかなか面白い。実は統計学ではデータの代表値として平均、最頻値(モード)、中央値、分散、標準偏差それぞれがわかることとわからないこと、という特徴をもった代表として扱われる。一方、マスコミの調査する世論というものは、たいてい平均値をとられてしまうことは確かで、その平均値に世論が擦り寄っていく現象が起きていくことも確かだ。「9と1の平均値」と「4と6の平均値」が同じであることに案外気付いていない。日本人は統計・数値に弱いし、数値で物事を考えるのが嫌いだ。
アメリカの良し悪しは置いておいて、多民族国家の中では相互に理解しあえるルールが必要であったことから、数値というルールをたてることが多くなった。それが行き過ぎて、今年の経済破綻を起こしていることも事実だが、価値観が単一になると、そういったルールに悩むことなく、「常識=平均値」としてルールの確立が難しい状況を生み出しているのではないだろうか。
思考停止は、同じ価値観の集団・組織から生じる。マスメディアの価値観は多様でなければならない。左傾化して自分にあってるからこの雑誌はいいとか、右傾化しているからこの新聞は悪い、ということなのではなく、多様な価値観が発信されていなければ、国民は思考停止になる。そういう意味ではメディアの中でしっかりとした「対話」ができなければならない。テレビで喧嘩になるから同じ思想系をテーブルに並べて会話するテレビではダメだろう。しかし視聴率は上がんねーだろうなぁ・・・
但し、この本は、かなり社会問題に精通していなければ場面場面で出てくる問題が繋がっていかないのではないかとも思える。
小説の評価よりも、メッセージとして発している「思考停止」について述べてしまったが、急激に豹変する民衆についての記述が不足しており、観方によってはリアリティが無いSFにも読みとれてしまう。